インナーチャイルドとは

この世的価値観からは感情が生じる

価値観には、善があり、「善を目指す」という意志の流れが生じます。これが生きる原動力となります。ただし、あなたが信じた価値観には、これは善、これは悪という二面性があります。
先ほどの、礼儀正しくないと駄目、美人でないと駄目、優秀じゃなきゃ駄目という、いわゆる悪がある価値観のことを「この世的価値観」と言います。悪、すなわち障害がある以上、遅かれ早かれ障害に遭遇することになります。障害に遭遇すると、意志の流れがせき止められて、意志が凝集し、渦ができる。この渦が「感情」です。
たとえば子どもは、『愛されることが善、愛されないことが悪』というこの世的価値観を、誰もが本能的に持っています。愛されないと生きていけない。愛されないとおっぱいがもらえず、死んでしまうからです。大人になったら、おっぱいがもらえなくても、親から愛されなくても生きていけますよね。でも、子どもはそうはいかない。
弟が生まれて、今までお父さん、お母さん、全部の愛をもらっていたのに、今度は親が、弟ばかりを可愛がるようになります。弟が障害となって、愛されたいという意志の流れがせき止められて凝集し、感情(悲しみ、恐れ、怒り)が生じるわけです。愛されたいという強い思い、強い願い、欲、それが感情です。感情というのは、心の急性病です。感情は心の病気なんですね。

インナーチャイルドとは?

感情は思い通りにならないときに生じる、思い通りにしたいという強い思いであり、欲であり、苦しみであり、ストレスです。今日はね、お彼岸なので、仏教用語で言うと「煩悩」です。

感情は、障害を取り除く行動を起こそうとします。この場合は、弟をバンと叩いたりします。だけど親に怒られて、愛して欲しいのにお姉ちゃんだから我慢しなきゃねと言い含められて「私だけを愛して」という強い思いを我慢して、我慢して、我慢します。我慢した感情が、体の潜在意識に沈み込んでいきます。感情というのは普通、心にあるのです。弟ばかり愛されているのがつらい。そのことをずっと感じているとつらいでしょ。ですから、潜在意識、体に落とし込んでいくのですよ。で、潜在意識の中で思い通りにならなかったストレスを維持して、肩こりになったり生理痛になったり、膝が痛いとか、関節が痛くなったりするわけです。ですから、痛みとして現れているものは、あなたの悲しみだったりします。刺すような、熱い、痛みの感覚は、あなたの怒りだったりします。そうやって、痛みとして出てくるのです。
このように抑圧した感情、未解決な感情、つまり未解決な欲を「インナーチャイルド」略して「インチャ」と言います。

意識的に、つらかった出来事を思い出しましょう。否定された出来事に向き合いましょう。嫌なことを思い出さなければいけないから、みんなやりたがらないのだけれど、意識的にそれをやるんです。で、あのとき、弟ばかりが可愛がられて、自分は可愛がられてないという事実を突きつけられて、つらかったね、自分は駄目だと責めていたね、あの5歳の頃はつらかったねと自分を慰めるのです。
そうして、弟より愛されない自分を受け入れて、可哀想に、可哀想にと頭を撫でて抱きしめてあげる。親から愛されない自分を、自分が愛してあげる。大人のあなたが愛してあげる。そして、お母さんがこっちにおいで、こっちのおっぱいは君のものだよと言ってくれるイメージをします。イメージだから何でもありです。そうやって過去を書き換えるのです。これを「インナーチャイルド癒し」と言います。
こういうことをするのは女々しいと思っている人は、インチャ癒しが難しいかな。何も女々しくはありません。苦しんでいる小さい頃の自分がいるのですから、その子を救ってあげることは、尊い、尊い行いです。インナーチャイルド癒しは、自分を大事にしてあげるということ。ですから、愛されなかった自分を心から愛してあげましょう。

インナーチャイルドというのは、心の慢性病です。私たちの心というのは、潜在意識、体に落っこちた膨大なインナーチャイルドの集合体なのですよ。そして、同種の出来事で共鳴して、子どもの頃の未解決な感情を現在の出来事に投影しては、急性の感情として、ぼんと出てきます。
「君、駄目だね。コピーもできないの」って上司に言われたら、死にたくなった。それは過去にお父さんから、「お前は駄目だな、弟はよくできるのに」って言われた心の傷があるから。上司に、お父さんを投影しているだけです。そうして、浮上してくるわけです。
悔しいとか、悲しいとか、死にたいとか、小さい頃に我慢した感情が。だからこの上司は、あなたにとって神さまです。ありがたいね。だって、傷があるよって教えてくれているのだから。
子どもの頃に母に愛されず、愛されたい悲しみのインナーチャイルドがあると、今の彼氏にほんのちょっと冷たくされただけで悲しくなって、強く強く愛を求めていくようになります。そして、こんな面倒くさい女は嫌だと嫌われてしまいます。

インナーチャイルドというのは、抑圧した感情と言いましたけれども、感情には『こうしたい』という意志、『こうすべき』という価値観が必ず含まれています。ですから、インナーチャイルドとは、正確には、自分から切り離されて孤立して存在している、価値観(魂)と感情(心)を持ったもうひとりの自分なのです。それが膨大に、無数に、あなたの中にいるわけです。我慢した感情がある限り、インチャ1、インチャ2、インチャ3、インチャ4、インチャ100、インチャ1000とかね、いるわけです。私たちには、何人もの、悲しんでいる、恐れている、怒っているインナーチャイルドがいるということです。

抑圧され未解決となっている感情(心の慢性病)、
この感情がインナーチャイルドです。

動画『由井寅子のインナーチャイルド癒やし入門(1h38m)